露天風呂で締め出された話。

20そこそこ、独身のときの話。
未だに後悔していることがある。
※モヤっとする話なので苦手な方はスルーしていただきたい。

当時付き合っていた彼と何かの記念日で旅行に出かけた。
宿につき、夜ご飯までは時間があるので早めにお風呂に入ってきちゃおうか、ということになり、それぞれ大浴場へ向かった。
4時過ぎだったので、まだそれほどは混んでいなかった。

内湯でしばらく温まった後、露天風呂があったので、一人で移動した。
そこへ、小学校高学年くらいの女の子が一人で露天風呂に現れた。
女の子は露天風呂のふちに腰掛け、お湯を足でパシャパシャ蹴ったりしていた。
それほど広いお風呂ではないので迷惑だなぁ、なんて思いながら私は女の子と距離をとった。
しばらくすると女の子は露天風呂から出ていった。

私もそろそろ出ようと思って露天風呂のドアを開けようと思ったら。
…開かない。
中から鍵がかけられている。

露天風呂のドアには細長い窓がついており、中の様子が見えるのだが、女の子と目が合った。
私は「鍵を開けて!」というジェスチャーを送ったが、女の子はニヤニヤしていた。
わざと鍵をかけたのだ。
そのうち、女の子はどこかへ行ってしまった。

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取り残された私は、まず状況を整理した。
場所は東北。季節は冬。
露天風呂で暖をとることができるので凍死の心配はない。
それほど混んでいないものの、露天風呂に入る客が気づいて鍵を開けてくれる可能性も高い。
命を脅かされるようなことはなさそうだ。

それでも、冬の露天風呂に締め出され、タオル一枚で、いつ助け出されるかわからない不安。
露天風呂から中へ連絡が取れる手段を探したがなかった。
恥を捨てて行動に出ることにした。
あの女の子にひとこと言ってやらないと気が済まない。

大浴場の中はシャワーの音や反響などで外からの音は聞こえづらくなっている。
露天風呂のドアをがむしゃらに叩き、「開けてくださーい!」と大声で何度も叫んだ。
身体が冷えたら露天風呂で温まり、またドアを叩き、叫び続けた。
「せっかくの記念日なのに、なんか惨めだなぁ」なんて思いながら。
締め出されてから5分くらい経っただろうか、露天風呂に一番近い洗い場にいた女の人が私に気づき、鍵を開けてくれた。

「大丈夫ですか??」
「女の子がいたずらで鍵を閉めちゃったみたいで。ありがとうございました」

なんて会話を交わして、すぐに大浴場内を探したが女の子の姿はなかった。

そして夕食の時間。
その宿は部屋ではなく会場に集まって団体ごとにテーブルで食べるスタイルだった。
おじいちゃんの集団や、ファミリー、カップルなど、様々な団体がいて賑やかだった。

その中に、あの女の子がいた。
なにやら家族ともめているようだった。
おばあちゃんらしき人に文句を言っているのが見えた。

私はとっさに身を隠した。
ひとこと言ってやらないと気が済まないと思っていたのだが、もう、なかったことにして関わらないでいたかった。
私には、こんな大勢の人がいる中で、あの女の子のいたずらを咎める勇気はなかった。
正直、あの女の子に関わって面倒なことになるのも嫌だった。

露天風呂に締め出されたこと自体は、それほどダメージはなかった。
でも、それを「悪いことだ」と女の子に言えなかったという事実は、いつまでも私に後悔を残した。


――十数年経った今でも「あのとき勇気を出して女の子に注意をしていれば」と思うことがある。
家族以外に、いたずらの被害者しか女の子を叱ることができないからだ。

私は、せっかくの記念日にトラブルを起こしたくないという自己保身から、女の子を叱る機会をみすみす逃したばかりか、「あれ位のいたずらをしても怒られないんだ。」と助長させてしまったかもしれない。

あのときは若かったから言えなかったのか。
30半ばを過ぎた今、同じことが私に起こったら、私はどう行動するか考えてみた。

まず、あのときのように泣き寝入りだけはしない。
露天風呂の鍵を開けてくれた人の部屋番号と名前を確認する。(いざというとき証言してもらうため)
宿にも報告をする。
夕食会場で、母親と話をする。(同じ子を持つ親として)
(母親に承諾を得られれば女の子とも話をする)

これくらいだろうか。

なにか問題に直面した時、冷静に正しく行動できる人でいたいと思うが、なかなか難しいものだ。

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今回の教訓
・小学校くらいの子どもは、善悪が判らずとんでもないことをしでかすことがある。
・言いたいことは機会を逃すと言いにくくなる。言いたいことがあるなら、なる早で!